ワンちゃんをターゲットにした商品「Furbo」を販売するTomofun株式会社の代表取締役の布施健さんにお話を伺いました。
Furboはこれまでの常識を覆したドッグカメラで、飼い主は外出先からドッグカメラを通して家にいる愛犬の様子を見たり、話しかけたり、写真を撮ったり、さらにはおやつをあげたりすることができます。
オンラインストアではShopifyを使用して、毎年のBFCMでは日本でも驚異的な売上を記録しています。今回はそんなFurboの成功の秘訣について迫ります。
犬の人生は大半がお留守番
Furboを生み出したのは台湾出身の実業家であるビクター・チャン氏です。チャン氏は、犬を飼っている人々の悩みである「お留守番中の不安」を解決する策がないのに気づき、自らFurboのコンセプトの着想に成功。現代人のライフスタイルでは、愛犬のお留守番の時間は必然となっていたのです。
「犬は人生の大半をお留守番をして過ごしています。今まではそこのソリューションがありませんでした。とは言っても、お留守番はみんな心配で不安です。その心配、不安を解消するために何かをしているかというと、実は皆さん何もできていなかったんですよね。そこの悩みに寄り添えるような商品を作ろうということで、Furboが開発されました」
愛犬家の悩みのソリューションとして誕生したFurboは、2016年6月に米国のクラウドファンディングで51万ドルを調達し、瞬く間に評判が広がりました。そして、海を渡り、日本にやってきたのは2016年9月。日本がFurboのメイン市場に選ばれたのは、日本人が愛犬をペットというよりも家族として扱うことからだと布施さんは語ります。「自分がちっちゃい頃、ワンちゃんは家の外で鎖でつながれていました。でも、今は犬がどんどん家庭の中に入ってきています。犬の家族化が非常に進んでいるのです。日本はペット人口も多く、非常に魅力的なポテンシャルがありました」
ワンスタグラマーの存在
日本上陸に伴い、Furboがオンライン販売で選んだプラットフォームはShopify。布施さんは、「Shopifyは海外で使っているユーザーさんも多い。さらに商品の見せ方だったり、直感的に使用できるところが魅力的でした」と、当時を振り返ります。
しかし、昨今の世の中で商品を売るのは容易なことではありません。なぜ、Furboは1年足らずで急成長を遂げることができたのでしょうか。その大きな理由の一つにInstagramマーケティングがあります。布施さんは「世界でも日本は圧倒的にInstagramの効果が出る」として、「ワンスタグラマー」の存在が非常に大きかったと語ってくれました。
「Instagramでは犬のアカウント、いわゆるワンスタグラマーがすごく人気なんですよね。人間のタレントさんは基本的にローカライゼーションが働くんですよ。例えば中国のトップモデルってあまり日本では知られていないじゃないですか。でも、日本で人気の柴犬は世界のどの人が見ても共通で可愛いと感じる。そういう意味で考えると、人よりも犬などの方がよりフォロワー数とかエンゲージメント率でレバレッジが効きやすい。情報として拡散しやすいのです」
ブラックフライデーで大成功
ワンスタグラマーの効果や、テレビでの紹介などもあり、売上が伸び続けているFurbo。はじめて参加した2017年のBFCMでは大規模なキャンペーンを次々と打って大成功しました。1日の売上はなんと通常の数十倍にものぼったそうです。しかし、実はBFCMのキャンペーンは初めてだったと教えてくれました。日本での認知度が低いブラックフライデーになぜ挑戦したのでしょうか?
その理由について、布施さんは「みんながブラックフライデーのセールを始める前に先手を打っておきたかった」と教えてくれました。
「去年はセールをやらなかったんですよ。やろうとは考えていましたが、日本でのブラックフライデーの知名度がない感じていたのでやらなかったんです。でも、ニュースで日本でもそういう動きが出てきたと聞きました。なので、多くの会社がブラックフライデーのセールをやるようになってから始めるよりは、ある程度先手を打った方が、先行者メリットがあるんじゃないかと考えて、ブラックフライデーのセールに挑戦しました。実はその時期って日本ではボーナスが迫っている時期で、セールの需要はあるんですよね」
カスタマーサポート
もちろん、Furboが力を入れているのはマーケティングだけではありません。カスタマーサポートに関しても非常に手厚く、重点的に取り組んでいます。「サポートの基準は設けつつも、いかにユーザーを感動させることができるか」と、ルールを超越してもユーザーに寄り添う姿勢で常にお客様のことを考えてサポートを行なっています。また、ユーザーと企業が直接会話できるFacebookのコミュニティも用意し、そこでのサポートはもちろんのこと、ユーザー同士の助け合いにもつながっているとのことです。
仮想ペットシッターへ
進化を続けるテック市場。Furboは波に乗り続けるためにこれから何に挑戦していくのでしょうか?布施さんは、Furboを仮想ペットシッターにしたいとの目標を語ってくれました。
Furboの最新モデルにはAIが搭載されていて、愛犬の様子をリアルタイムで通知する「スマートドッグ機能」が搭載されています。しかし、将来的には愛犬の「今」をただ通知するだけではなく、愛犬の行動から次に起こることを予測し、忍び寄るリスクをあらかじめ通知できるようにしたいとのことです。そのためには犬に関するビッグデータの収集が不可欠になってきます。
「お留守番の様子をビッグデータとして貯めていくことによって、愛犬に忍び寄るリスクを未然に通知するようなフェーズまで持っていけたら、理論上では人間のペットシッターよりもAIのペットシッターの方が優秀になれる可能性が高いのです」と、布施さんは語ります。
「AIはワンちゃんをずっと見ていますよね。人間のペットシッターは、他のワンちゃんの仕事をしていたりだとかで、どうしても見れない瞬間がある。でも、Furboに写っていれば、24時間監視をして行動をレポートし続けられます。さらに人間のペットシッターとは違って世界中の何十万ものワンちゃんのデータを持っている。ビッグデータを貯め続けていけばAIは人間のペットシッターを超えられると思っています。そこまで持っていけるようにグローバルでもたくさんの人に使っていただきたいですね」
今までの常識を覆す数々のアイデアも、すべては「犬の人生は大半がお留守番」という悩みから始まっています。そして、今後は愛犬にとってもお留守番がより退屈にならないようなサービスの提供も考えているとの構想も教えてくれました。
「FurboからBluetoothでつないで、何かおもちゃを操作するとか、別の部屋に置いたレンズにコネクトさせるとか、Furboをプラットフォームとして他の機器を遠隔で動かす。そういうアクセサリを出して行こうかなと思っています」
愛犬と飼い主の新しい関係性の橋渡し役を担っているFurbo。拡大するペットテック市場を牽引しながらも、彼らの挑戦はこれからも続きます。
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