スモールビジネスのオーナーであれば、大企業のAmazon(アマゾン)に対抗するにはどうすればいいか一度は考えたことがあるでしょう。顧客第一主義を徹底することで成長を遂げたAmazonに、大半の企業が大なり小なり影響を受けています。しかし、Amazonとの直接の競合となっている企業の多くが、十分に利益を生み出しています。
この記事では、小売業におけるAmazonの競合10社を取り上げます。また、顧客獲得や売り上げ増を実現するために、中小企業が実践できる具体的な対策をご紹介します。ECモール運営など、オンラインで小売業を行っている人はぜひご覧ください。
Amazonの競合他社サイト10社
1. ヨドバシ・ドット・コム
ヨドバシ・ドット・コムは、日本国内で高い評価を受ける大手家電量販店ヨドバシカメラの公式オンラインショッピングサイトです。2023年にはEC売り上げランキングでAmazonに次ぐ2位になった実績があります。さらにサービス産業生産性協議会が行っている日本版顧客満足度指数調査では、2023年に10年連続1位となっています。年会費無料の会員登録をすればどの商品も全国無料で配送してくれる上に、多くの商品がポイント10%還元であるため、そのお得感から高い顧客満足度を維持しています。
2. 楽天市場
楽天市場は、1997年に設立された日本最大級のオンラインショッピングモールです。楽天市場の国内年間EC流通総額は6.0兆円(2023年)であり、高い集客力が魅力です。「楽天スーパーセール」や「お買い物マラソン」といった大規模なセールイベントが定期的に開催されるなど、集客や売り上げアップのための仕組みが整えられています。また、楽天市場に出店すると専門のECコンサルが付き、売り上げアップに向けたアドバイスをもらうことができます。
3. Yahoo!ショッピング
Yahoo!ショッピングは、日本の大手ポータルサイト「Yahoo! JAPAN」が提供するオンラインショッピングモールです。2022年にPayPayモールと統合され、規模がさらに拡大されました。Yahoo!ショッピングは、初期登録費用や月間出店料がいずれも無料で出店できることから出店店舗数が約120万店舗と圧倒的に多く、Amazonの約14万店舗や楽天市場の約5.7万店舗を大きく引き離す結果となっています。また、Yahoo!ショッピングはスマホ決済のシェア率1位を誇るPayPayと連携されており、利便性が高いことも魅力です。
4. eBay
eBayは1995年に始まった米国発のオンラインマーケットプレイスで、個人から法人まで多様な出品者が商品を販売しています。
価格を決めて出品する形式、つまり一般的な販売形式である固定価格形式のほか、オークション形式や、固定価格とオークションを組み合わせた形式を出品者が選択できるのが大きな特徴です。商品や人気度に合わせて出品形式を選択できます。さまざまな国で利用されており、多言語対応や国際配送のオプションもあるので、越境ECを検討している場合にも適しています。
また、新品の商品だけでなく中古品に関しても活発に取引されているため、eBayは巨大なバザー会場のようになっており、この点もAmazonとは大きく違うところと言えるでしょう。
5. ZOZOTOWN
ZOZOTOWNは2004年に運営開始となった、ファッションとコスメに特化した日本のオンラインショッピングサイトです。最新のファッションアイテムやコスメなど、おしゃれを楽しめる商品を取り扱っており、特に若者に人気があります。性別、色、デザインなど、細かくカテゴリー分けされており、実際に商品を手に取ることができないオンラインという環境下でもイメージがしやすくなるような工夫が施されています。2023年度には流通総額4,647億3,400万円を達成しました。
6. BUYMA
BUYMAは、個人輸入代行の業者が出店するオンラインマーケットプレイスで、日本未入荷アイテムや海外限定品が数多く取り扱われています。アパレルやコスメ製品、高級ブランド品が販売されています。
消費者は日本にいながらにして海外の最新トレンドアイテムを手に入れることができます。購入後のブランド品に対する鑑定をBUYMAが行う無料鑑定サービスや、配送途中での商品紛失を補償する紛失補償制度などが消費者に提供されており、安心安全な取引に対する取り組みが行われています。
7. ASKUL
ASKULは1993年に開始された、オフィス向け事務用品をメインに扱うECサイトです。事務用品だけでなく、ハンドソープや作業服など企業に必要なあらゆるものが揃っています。運営会社のアスクル株式会社は、これまで培ってきたノウハウを活かし、個人向け日用品販売サイトの「LOHACO」の運営も2012年に開始しています。ASKULはJ.D.パワージャパン主催の法人向け通販サービス顧客満足度調査(2023年)において、3位のAmazon Business(アマゾンビジネス)を押さえ2位を獲得しています。
8. SHOPLIST
2012年に開始されたSHOPLISTは、ファストファッションに特化したオンラインショッピングサイトで、特に若い女性向けのカジュアルファッションアイテムが豊富に揃っています。有名アイドルがCMに起用されたこともあり、ファストファッションを求める人たちの中で知名度が高くなっています。ショップのアプリ提供は2015年に開始されましたが、2019年には1,000万ダウンロードを達成しています。これからの成長が期待できるECモールと言えるでしょう。
9. Walmart
Walmartは、1962年設立の米国に本社を置く世界最大級の小売企業で、米国の小売業界においてAmazonとその地位を二分する存在となっています。Amazonはオンライン販売において、Walmartは実店舗での販売においてそれぞれ軍配を上げています。Walmartは2023年に6,110億米ドルの収益を記録し、5,740億米ドルとなったAmazonを上回る結果を残しています。
10. Alibaba.com
Alibaba.comは、アリババグループが展開する中国のBtoBマーケットプレイスです。アリババグループはその他にも、AliExpress(アリエクスプレス)、淘宝(タオバオ)、天猫(テンマオ)などの小売り子会社も展開しています。Alibaba.comは膨大な数のサプライヤーと直接交渉できることが強みで、BtoC(企業対消費者)事業のタオバオは衣類、アクセサリー、ガジェット、コンピューターハードウェアを低価格で扱っていることが強みです。こうした特長を活かし、アリババグループはアマゾンとの差別化を図っています。
アリババグループ全体では、2021年に約1,340億ドルの収益、2022年9月30日までの12か月間は1,310億ドルの収益を達成しています。Alibaba.comは中国のオンラインショッピングにおいて覇権を握っているため、中国企業にアプローチする場合に適しているプラットフォームです。
スモールビジネスがAmazonに対抗するには
顧客満足度の高いカスタマーサービスを提供する
顧客一人ひとりにきめ細やかな対応を行うことで、Amazonとの差別化を図れます。商品発送時やメール送信時などに小さな手間をかけることで心遣いが顧客に伝わり、リピート購入につながります。例えば、受注お礼メールを送信する、商品の発送時に手書きのお礼状を同封する、顧客にフィードバックを求める際は個別メッセージを送信する、クレームに迅速かつ適切に対応するなどの方法があります。こうしたひと手間をかけられるのは、少人数でビジネスを回すスモールビジネスならではの強みです。
オムニチャネルを活用する
顧客を獲得・維持して大企業に対抗していくためには、顧客との接点(チャネル)を増やして繋ぎ、販売増を目指すマーケティング手法であるオムニチャネル戦略を取る必要があります。Shopify(ショッピファイ)が行った調査では、買い物客の73%が購入前に複数のチャネルを使用しています。また、オムニチャネル戦略を採っている事業者は平均して収益が190%増加していることが明らかになっています。オムニチャネル戦略は、1人の顧客が生涯において企業にもたらす利益を意味する顧客生涯価値の向上や、新しい顧客セグメントへのリーチなどに効果があると言われています。また、在庫回転率や運用効率の向上にも役立つため、積極的に取り入れるのが良いでしょう。
大手ECモールを活用する
自社ECサイトだけでなく、楽天市場のように顧客数が多く信頼性の高い大手ECモール経由でも商品を販売するのも生存戦略として重要です。また、販売する商品の性質に合ったECモールを使用することで、興味を持つ顧客にリーチしやすくなるため、売り上げを伸ばしやすくなります。例えば、日本未入荷商品や海外限定アイテムを販売する場合は、「BUYMA」を利用するのが効果的です。
会員特典制度を導入する
会員特典制度を導入すればリピート客を獲得しやすくなるため、Amazonをはじめとする大企業にも対抗しやすくなります。アクセンチュアの調査(英語)によると、ショップで会員登録をした買い物客は、非会員と比較して最大18%多く企業に利益をもたらしています。Shopifyでは会員特典制度をストアに実装できるアプリが多数用意されているので、Shopifyを利用して構築したECストアであれば、簡単に会員特典制度を導入できます。
ターゲット層との活発な交流を図る
自社のターゲットとなる人たちと直接、積極的に交流することができる、というのもスモールビジネスならではの大きな強みです。事業関連のイベントを立ち上げる、既存イベントに協賛する、地元に寄付をする、地域団体を支援するなどの方法を採ることでターゲット層における知名度向上を図るのも良いでしょう。
まとめ
世界的にAmazonが広く利用されているものの、さまざまな企業がAmazonに対抗する策を講じ、顧客獲得に成功していることが分かります。各企業の事例を参考にして効果的に顧客にアプローチすることで自社の利益増に繋げることができるでしょう。顧客満足度の高いカスタマーサービスを提供したり、ターゲット層との活発な交流を図ったりすることで、スモールビジネスであっても力をつけていくことが可能です。
よくある質問
Amazonマーケットプレイスとは?
Amazonマーケットプレイスは、個人や法人のサードパーティの販売者がAmazonに商品を出品できるサービスのことです。Amazonで扱われている商品にはAmazon直販のものと、一般個人や業者が販売するものがありますが、一般個人や業者がAmazonで販売を行う際にはこのサービス経由で行います。出品者はマーケットプレイスに新品と中古品を出品することができます。
アマゾンの競合となるサービスは?
小売業:
- Alibaba.com
- Target (ターゲット)
- eBay
- Walmart
- JD.com(ジェイディドットコム)
- Flipkart(フリップカート)
- 楽天市場
ストリーミングサービス:
- Netflix(ネットフリックス)
- AppleTV(アップルテレビ)
- Disney+(ディズニープラス)
- Hulu(フールー)
クラウドやウェブサービス:
- Alibaba Cloud(アリババクラウド)
- Microsoft Azure(マイクロソフトアジュール)
Amazonの間接的競合は?
Amazonと提供する商品内容は異なるものの同様のメリットを提供する会社、すなわち間接競合となる企業には、Google(グーグル)、Apple(アップル)、Shopifyなどが挙げられます。
アメリカにおけるAmazonの競合企業は?
Walmart、eBay、Apple(アップル)、Target、The Home Depot(ホームデポ)などが挙げられます。
文:Ryotetsu